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米山隆一氏「外国人の方が日本人の半分しか犯罪を犯さない安全な人達」→調べてみた結果…

つるの剛士氏のツイートに、米山隆一氏が噛み付いた。

「外国人差別」を危惧した米山氏は、外国人と日本人の刑法犯について警察庁の統計データを引用し、「外国人の方が日本人の半分しか犯罪を犯さない安全な人達」と主張した。

差別は絶対に見過ごせない事案であり、今回の件は非常に興味深い。

米山氏の主張が正しいのか検証してみよう。

米山隆一氏による「外国人刑法犯」の解説

「日本人の人口で比べると外国人は2.2%しかいない。そして刑法犯で比べても1.2%しかいない。そのため罪を犯す外国人は日本人の約半分しかいない」というのが米山氏の主張だ。

刑法犯のおける外国人と日本人の比率から、「相対的に見て外国人の方が日本人の半分しか犯罪を犯さない安全な人達と言えます」と主張する米山氏。警察庁の統計データを提示している。

米山氏の主張する刑法犯の数だが、時期は平成30年のデータだ。以下に統計データの資料を記載しておく↓

※1 令和元年版 犯罪白書 第2編/第1章/第1節/1
(第2編 平成における犯罪・少年非行の動向 第1章 犯罪の動向 第1節 刑法犯 1 主な統計データ)

※2 令和元年版 犯罪白書 第4編/第9章/第2節/1
(第4編 平成における各種犯罪の動向と各種犯罪者の処遇 第9章 外国人犯罪・非行 第2節 犯罪の動向 1 刑法犯)

犯罪行為は刑法犯だけでなく特別法犯もあるが、定義が広くなるためここはあえて触れない。ソースも提示していることから、米山氏の主張は正当に思える。しかし、挙げている数値の比較対象に違和感を感じる。

「外国人刑法犯9573件」と「日本人刑法犯81万7338人」は比較対象として正しいのか?

違和感①「認知件数」と「検挙件数」の違い

まずはじめに米山隆一氏が自身のツイートに添付した画像だが、来日外国人刑法犯は「検挙件数」で、日本人刑法犯は「認知件数」で比較している。

認知件数とは認知された数、検挙件数は検挙された数である。捜査機関に認知された事件が、すべて検挙に繋がるとは限らない。事案にもよるが、一般的には認知件数よりも検挙件数のほうが少なくなりやすい

ちなみに米山氏が紹介した日本人刑法犯の認知件数は「81万7338人」だが、検挙件数は「30万9409人」だ(※1)。50万も値が異なれば、計算も正確性を欠くはず。

認知件数・検挙件数・検挙人員、どれを用いてもいいのだが、少なくとも揃えるべきだろう。「外国人は検挙件数」「日本人は認知件数」と分けてしまっては正しい比較ができない。

そもそも犯罪が発生した時点で犯人の国籍は不明なので、認知件数が「日本人だけ」とは限らない。もしかしたら外国人が含まれているかもしれない。(外国人刑法犯の認知件数は資料に記載されていないため、認知件数は国籍関係なく一括りにされている可能性あり)

外国人刑法犯の数を検挙件数で表しているなら、日本人刑法犯も検挙件数を用いて比較するべき。すなわち「30万9409人」という数字で比べたほうが正確かと思われる。

なぜ米山氏は、外国人には値が相対的に低くなりやすい検挙件数を、日本人には値が相対的に高くなりやすい認知件数を、それぞれに適用して比較したのだろうか?

聡明な彼のことだ。常人では想像できないほどの何か狙いがあるのかもしれない。

・認知件数
警察等捜査機関によって犯罪の発生が認知された件数。
(Wikipediaより)

・検挙件数
警察などが検挙した事件の数。
(防災情報ナビより)

・検挙人員
警察などが検挙した事件の被疑者の数。
(防災情報ナビより)

違和感②「来日外国人」と「その他の外国人」

そして米山隆一氏の指す外国人だが、ツイートにある「9573件」は「来日外国人の検挙件数」だ。なぜか「その他の外国人」が含まれていない

外国人と日本人を比較するならば、警察庁でもデータが記載されているように「その他の外国人」の「検挙件数」も含めなければ、恣意的に低い数字となってしまう。含めなければ外国人の中で差別になるため、合算するべきだろう。

ちなみに「来日」も「その他」も合算した場合、平成30年の外国人刑法犯は検挙件数が1万5,549件、検挙人員は1万65人だ(※2)。この数字は警察庁の統計として記載されている。そういう意味でも、きちんと合算したほうが比較として適切だろう。

したがって外国人刑法犯の件数は「9573件」ではなく、「1万5549件」と合計の数字で日本人刑法犯と比較するしたほうが正確かと思われる。

なぜ米山氏は、「来日外国人の検挙件数9573件」という限定的な数字のみを使用し、外国人刑法犯のデータを少なく見せたのだろうか?

「歩く知性」と言っても過言ではない優秀な人である米山氏は、おそらく常人が決して辿り着けない領域内で考えているのかもしれない。

外国人による刑法犯 検挙件数・検挙人員の推移
平成30年の統計データ(※2)
【検挙件数】
・来日外国人の検挙件数:9,573件
・その他外国人の検挙件数:5,976件
→合計15,549件

【検挙人員】
・来日外国人の検挙人員:5,844人
・その他外国人の検挙人員:4,221人
→合計10,065人

以上を踏まえて、

米山隆一氏の主張する「外国人の方が日本人の半分しか犯罪を犯さない安全な人達」が本当に正しいのか、改めて調査してみようと思う。どちらが多い少ないからと言って差別するのではなく、あくまで米山隆一氏の主張を検証するためだ。

人口は米山氏のツイートにもある「外国人282万9416人」「日本の人口1億2614万人」を使わせていただく。時期も定義も曖昧で誤差が生じるとは思うが、ご了承いただきたい。

そして外国人刑法犯の認知件数がわからないため、認知件数は使用しない。代わりに平成30年の検挙件数検挙人員で算出する。比較対象を合わせないと公平性は保てない。

また米山氏は「来日外国人のみ」で比較しているが、正確に算出するため「来日」と「その他」の合計とする。

まず、米山氏の計算では「外国人の刑法犯は9573件日本人は81万7338人でありその比率は1.2%」とのことなので、1.2%が比率として正当性があるのか検証する。いわゆる米山流の計算で、比較対象を合わせて計算し直す。

次は刑法犯の件数と人数をそれぞれの人口で計算し、外国人と日本人どちらのほうが刑法犯の人口比率が高いのか算出してみた

「外国人は日本人の半分しか犯罪を犯さない」が事実なのか検証する。

「外国人は日本人の半分しか犯罪を犯さない」を検証

①米山流 計算

検挙件数

外国人刑法犯の件数:日本人刑法犯の件数
15,549(件):309,409(件) ≒ 4.8(%)

検挙人員

外国人刑法犯の人数:日本人刑法犯の人数
10,065(人):206,094(人) ≒ 4.7(%)

【結論】
米山氏が提示した1.2%だが、「片方だけ認知件数を使う」ことをせずに比較対象をきちんと公平に合わせた場合、1.2%という比率にはならなかった。2.2%の半分どころか2倍以上の数値だ。

②人口比

検挙件数

・外国人刑法犯
15,549(件) ÷ 2,829,416(人) × 100 ≒ 0.55(%)

・日本人刑法犯
309,409(件) ÷ 126,140,000(人) × 100 ≒ 0.25(%)

検挙人員

・外国人刑法犯
10,065(人) ÷ 2,829,416(人) × 100 ≒ 0.36(%)

・日本人刑法犯
206,094(人) ÷ 126,140,000(人) × 100 ≒ 0.16(%)

【結論】
米山隆一氏が主張する人口データと警察庁の資料をもとに、認知件数ではなく検挙件数と検挙人員で計算した結果、人口比における刑法犯の割合は外国人のほうが倍以上高いことがわかった

米山隆一氏の説は非常に興味深い

検証結果を以って、「外国人のほうが安全」「日本人のほうが安全」というような差別的な極論に持っていくべきではない。

ただ、比較するならば同じ条件に設定しないと、正しい数字は見出せないということ。米山氏は正しい数字を持ち出しているが、途中で捻じ曲げているため正しい答えに導かれない。これでは事実と言えないだろう。

仮に事実に基づかない情報で外国人を批判したら、その日本人は間違いなく「ヘイトスピーチ」と叩かれるはず。だが今回は”真実とは言えない情報”によって、米山氏は「日本人は外国人よりも犯罪率が高い」という印象を与えてしまった。

それにしても米山隆一氏がなぜ認知件数と検挙件数をゴチャゴチャにしてしまったのか、真相は不明だ。聡明な方だ、間違える可能性は低いはず。

米山氏の発言は常人の想像を遥か上をいくだけに、もしかしたら我々を試したのかもしれない。本当に数値が正しいのか、比較対象の違和感に気付けるのか、米山氏からの挑戦状だったかもしれない。

そのおかげで我々が知識を深めることができたなら、これほど「ハッピー」なことはない。米山氏はそこまで計算していた可能性はある。だとしたらさすが米山氏、いったい彼の頭脳はどれだけ高次元に進歩しているのだろうか。

おさらいするが、米山氏の主張する「外国人の方が日本人の半分しか犯罪を犯さない安全な人達」という意見は、米山氏が提示するデータから事実とは言い難い

しかも言い換えれば「日本人の方が外国人の2倍も犯罪を犯す危険な人達」になるため、根拠がなければ日本人に対するヘイトスピーチだ。

もし万が一、米山氏の件のツイートに対して「事実に基づかず日本人の印象を貶めた、日本人に対するヘイトスピーチ」と批判する人が仮に現れたとしても、米山氏は無視するのが得策だろう。相手にする必要はない。

今回の記事も、私が計算を間違えている可能性は十分にある。刑法犯には外国人も含まれており、例えば本稿で紹介した「日本人刑法犯の検挙件数309,409件」には「外国人刑法犯15,549件」も含まれる。本来なら引かなければならない。(ちなみに米山氏が主張する「日本人は81万7338人」は外国人刑法犯が含まれている)

人口についても、平成30年の在留外国人は273万1,093人だ。つまり外国人刑法犯の割合や比率について、273万1,093人で計算すれば若干数字は増える。

確かにそれぞれの定義を深く掘り下げていけば、人数や件数は増減するだろう。ただ、今回はあくまで「米山隆一氏が提示したデータ」を参考に算出しているため、多少の誤差はご容赦願いたい。

目的は「外国人の方が日本人の半分しか犯罪を犯さない安全な人達」という主張が正しいか否かの検証である。

もし結論が根底から覆るような計算ミスがあれば、読者の皆様には是非ともご指摘願いたい。

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POSTED COMMENT

  1. 匿名 より:

    一外国人だが、米山さんの言論がかえて変な論争を招き、良い迷惑だ。統計上の犯罪率外国人のほうが約2倍との結論あまり影響しないが、細かい計算を指摘させて頂きます。
    1.日本人刑法犯計算用数値は外国人も含めています、ただ最終結果にはあまり影響しない。
    2.外国人犯罪件数と人数からは「短期滞在(旅行者など)」と「米軍関係」を除く必要があります。人数的には783人ぐらい。

  2. 匿名 より:

    明らかにおかしい論理を展開されていらしたので
    スッキリとまとまっていて分かりやすくいい記事だと思います。

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