政治

江崎道朗氏「『日本政府は何もやってない』は嘘、安倍&菅政権は産業スパイ対策やってる」→経済安全保障政策への妨害工作を懸念

外交・安全保障、インテリジェンス、近現代史を研究する評論家で情報史学研究家の江崎道朗氏は11日、DHCテレビが運営する虎ノ門ニュースに出演。

火曜日の企画「火曜特集」では、「経済安全保障のウソ本当!?」をテーマに菅政権の経済安全保障の取り組みを解説した。

江崎氏は産業スパイ対策について「日本政府が何もやっていないというのはウソと主張、政治不信を煽る妨害工作の可能性を示唆した。

江崎道朗氏、経済安全保障に対する妨害工作を懸念

「産業スパイ対策、菅政権はやっている」

日本の警察官幹部が昇任試験を受ける際、試験対策として出版されている『警察公論』(KORON)を紹介した江崎道朗氏。ご自身も連載しているとのことだが、城祐一郎氏の連載「産業スパイ事犯等における情報の領得・開示等をめぐる諸問題(中)」を紹介した。

産業スパイに関する連載が載っているということは、産業スパイを取り締まる法律をもとに産業スパイ対策を理解していないと、日本の警察は出世できないということを意味するそうだ。しかもそれが2020年7月号のときに連載されており、安倍政権の頃から産業スパイの取締強化は図っていたことになる。ちなみに、2020年7月号には「インテリジェンスの近現代史・第10回(中国共産党の日本人捕虜工作)」というタイトルで江崎氏の連載も載っている。

続いて江崎氏は第二次安倍政権以降における経済安全保障の取り組みを紹介した。
①2016年に「経済安全保障の審議会」が経産省に設置
統合イノベーション戦略2019が閣議決定
③外国為替及び外国貿易法の改正(2020年)
④国家安全保障局に経済班を新設(2020年4月1日)

2016年、アメリカ大統領選挙でトランプ氏が当選したことを契機に、中国を念頭に置いた産業スパイ対策の連携及び強化に動いてきた安倍政権。不正競争防止法の整備をしてきた安藤久佳氏を事務次官に据え、それを踏まえて統合イノベーション戦略2019が閣議決定された。統合イノベーション戦略2020は2020年7月17日に閣議決定されている。

その後、日本の中核技術を持つ会社が外国に買収されないよう外為法が改正された。そして日本の技術(特に機微技術)を守る枠組みを作るため、官邸の国家安全保障局に経済班を新設。それを菅政権はきっちり受け継いで実行しているようだ。

スポンサーリンク

官僚やメディアによる菅つぶしキャンペーン?

自由民主党政務調査会・新国際秩序創造戦略本部は2020年12月20日、「『経済安全保障戦略策定』に向けて」という提言を発表。「経済安全保障の理念」や「我が国を取り巻く経済安全保障環境」、その上で日本が採るべき基本方針をレポートにまとめた。この「経済安全保障戦略策定」提言の中に、安全保障と土地法制における土地取引いわゆる「安保土地法案」も含まれている。

菅政権は来年の通常国会に、各省庁が産業スパイ取り締まりを可能とする法整備を進めるための「経済安全保障一括推進法案」提出を目指している。しかし、江崎氏いわく各省庁は猛烈に抵抗しているとのこと。「文科省も日教組とズブズブ」と主張するなど、どうやら省庁のメンバーに「産業スパイ取締強化で都合の悪い関係者」がいることを示唆している。それを背景に官僚とメディアによる「菅つぶし、ネガティブ・キャンペーン」が行われていると指摘した。

さらに江崎氏は公安調査庁に「経済安全保障特集ページ」が新設されたことを紹介。経済安全保障関連動向だけでなく、「経済安全保障の確保に向けて」というタイトルで「経済安全保障の観点から留意すべき現状」をまとめた経済安全保障啓発リーフレットも公開されている。技術やデータの流出で実例も紹介しながら注意点を説明し、なおかつ軍事転用の恐れを強く訴えた内容だ。

公安の取り組みは菅政権から始まった取り組みであり、安倍政権で強化されてきた産業スパイ対策は受け継がれている。アメリカと強固な同盟を継続して情報を共有していくためには、まず日本の科学研究や機微技術、中核技術の知的財産を流出させずに守る枠組みが必須だ。菅政権における経済安全保障の取り組みにまだ不十分な点もあると思われるが、江崎氏の解説を聞く限り「何もしていない日本政府」「嘘」で間違いないだろう。

スポンサーリンク

「日本は何もしていない」に警戒?

菅政権について左右や党派性問わず、世論では厳しい意見が多い。安全保障に関しても、いわゆる保守界隈や与党議員から厳しい意見が寄せられることも少なくない。支持率こそ「政権を維持できる」レベルにはあるが、リベラルだけでなく保守からの「何もしてない」批判は気になるところだ。

もし「日本は何もしていない」と不信感を煽る言動が「菅下ろしキャンペーン」だとすれば、我が国の経済安全保障が揺らぐ恐れも。ファクトに基づいて安倍政権〜菅政権における産業スパイ対策の評価点を挙げた江崎道朗氏、「警戒したほうがいい」との提言に重みを感じる。

事実に基づかない批評によって政府の良し悪しを判断することが、民主主義国家において致命的であることを深く理解する必要がある。我々国民が「願望」に走ることなく。そのためにも、政府の広報力が試されるときかもしれない。

この記事が気に入ったら
いいね ! しよう

Twitter で

COMMENT

メールアドレスが公開されることはありません。