元NHKチーフディレクターで、現在はファクトチェック団体の副理事長を務める超一流ジャーナリストの立岩陽一郎氏が、横行しているフェイクニュースを語った。
フェイクニュースは市民社会からも流れてくると指摘しており、「なくならないフェイク」が定説となりつつも「ファクトチェックに専門的なノウハウは必要ない」と述べている。
確かにマスコミや著名人だけでなく、一般人でもSNSでフェイクニュースを流す人は存在する。
過去にはアメリカ大統領選挙を取材した人たちが、トランプ支持者の発言を誤訳してそのままTwitterに投稿する事例もあった。
同調圧力は事実よりも強い? フェイクニュース拡散の裏
立岩陽一郎さん「フェイク流す人も市民社会の中から」
ファクトチェックの普及をめざす団体を3年前に仲間と立ち上げました。影響力がある人の発言や、新聞、テレビなど有力メディアの報道、さらにインターネット上にあふれる言説について、内容が本当に事実なのか中立的な立場から検証する取り組みです。ファクトチェックは、2008年の米大統領選挙の前に本格的に始まり、フロリダ州の地方紙がピュリツァー賞を受賞し注目されました。
候補者の発言の事実検証は画期的でした。日本のメディアでは、まだ「誰が何を言ったか」という発言の紹介のようなニュースが中心です。ファクトチェックに専門的なノウハウは必要ありません。私たちが17年の衆院選やコロナ禍でチェックを実施した際、参加したのは公募などで集まった学生や主婦です。
ただ「ファクトチェックをしても、フェイクニュースはなくならない」と言われることも多いです。フェイクニュースは15秒あれば簡単につくれることもあり、確かに特効薬にはならないかもしれない。しかし、フェイクニュースを流している人は、えたいの知れない化け物でなく、私たち市民社会の中から出ているのです。事実の重要性を意識する人が増えていけば、フェイクが拡散する比率も減ると考えています。
引用:https://www.asahi.com/articles/ASNCF3T39NBXUPQJ006.html?iref=comtop_7_02
トランプ支持者の発言を誤訳する立岩陽一郎氏
特定非営利活動法人ファクトチェック・イニシアティブ(通称:FIJ)の副理事長を務め、現在はNPOニュースのタネ代表である超一流ジャーナリスト立岩氏と言えば、アメリカ大統領選挙での取材が記憶に新しい。
自称ジャーナリストの超一流YouTuberたかまつなな氏と同行し、トランプ支持者の女性へ支持理由をインタビューした。
立岩氏は女性の発言を「外国人というかアウトサイダーを排除する、それが素晴らしい。外国人の侵略からアメリカを守る」と説明している。それをお笑いタレントのたかまつなな氏がTwitterに投稿している。
ニューヨークのトランプタワー前。トランプ支持者の人が集まり盛り上がっています。トランプをなぜ支持するか聞くと、外国人を排除しアメリカを守るという理由が。 #アメリカ大統領選挙 取材 pic.twitter.com/PAg9knGlp7
— たかまつなな/時事YouTuber (@nanatakamatsu) November 3, 2020
しかし、女性は「alien(外国人)」ではなく「illegal alien(不法入国外国人)」とハッキリ発言している。「不法移民よりもアメリカ国民を優先すべき」という彼女の主張を、「外国人を排除する」と訳したのが超一流ジャーナリストの立岩陽一郎氏だ。

「不法移民よりも自国民を優先すべき」という至極真っ当な主張を「外国人排除」と印象操作するような形で誤訳。そして自称ジャーナリストがSNSに投稿。まさにフェイクニュースが広まる要因だ。
今のところ立岩氏が誤訳を訂正や謝罪した様子は見られないが、代わりにたかまつなな氏が訂正ツイートを投稿している。一般の方々が指摘したことで、幸い世間を騒がすほどの事態には発展していない。
【訂正】インタビューの翻訳ですが「1994年の犯罪法を政策立案したバイデン氏よりも、不法移民よりもアメリカ市民を第一に考え大統領として実績もあるトランプ氏を信用し、支持している」というのが彼女の言いたかったことだと思います。申し訳ございません。ご指摘いただいた方ありがとうございます。 https://t.co/AgAYdOXS9k
— たかまつなな/時事YouTuber (@nanatakamatsu) November 5, 2020
自ら定説を立証する超一流ジャーナリスト
フェイクニュースやファクトチェックの専門家とも言える人間が、SNSでフェイクニュースを作り上げる要因になってしまう事例である。確かに立岩氏の「フェイク流す人は私たち市民社会の中から」という指摘は正しい。
このように、自らが定説を立証する立岩氏の姿勢は全てのジャーナリストが見習うべきだ。世の中に蔓延するフェイクニュースはいとも簡単に発信されてしまう。そしてSNSでは「専門的なノウハウを持たない」一般人がファクトチェックする。立岩氏の説は正しい。
フェイクニュースは故意なのか思いがけない形なのか、とにかく意外なところから発信されていることは確かだ。マスコミだけでなく、個々のSNSアカウントで手軽に発信されるフェイクニュースは、ネット普及の産物だろう。
さすがは元NHKの人間だ。「フェイクニュースは15秒あれば簡単につくれる」と語るように、いかにフェイクニュースが簡単に発信されてしまうかを自ら実践している。素晴らしいジャーナリズムだ。
引き続き、超一流ジャーナリスト・立岩陽一郎氏の活躍に期待したい。